「それ、本当に簡単なの?」
「eSIMなら、すぐ使えて安いらしいよ」
そう言ったのは、70歳の父でした。
スマホはiPhone。LINEと写真は使えるけれど、
設定画面はほとんど触らないタイプ。
母は少し不安そうに言います。
「でもそれ、私たちでもできるの?」
父は少し間を置いてから、こう返しました。
「若い人が“簡単”って言ってるから、大丈夫だろ」
──この時点で、もう多くのシニアの方は
「あ、分かる」 と感じたのではないでしょうか。
eSIMが「簡単」に感じる人の正体
eSIMが簡単だと言われる理由は、
操作が少ないからではありません。
実は、前提条件が多い
eSIMは、使う人がすでに次の状態であることを前提にしています。
- 設定画面を見ても焦らない
- 英語表記が出ても一旦落ち着ける
- 失敗しても「まあいいか」と思える
- 原因を自分で切り分けられる
これらが揃っている人にとっては、
確かにeSIMは快適です。
でも、少しでもこう思ったらどうでしょう。

これ、どこを押せばいいんだろう…
その瞬間、
eSIMは一気に“難しいもの”に変わります。
トラブルは、ある日突然やってくる
実際、その夫婦は海外に着いた直後、立ち止まりました。
「……繋がらないね」
空港のWi-Fiは弱く、
周りは英語。
サポートに連絡しようにも、
ログイン情報が分からない。
母が、ぽつりと言いました。
「ねえ、これ……誰かに聞けないの?」
この一言が、すべてでした。
eSIMは便利ですが、
困ったときに“人に見せて聞けない”。
これが、シニアにとって最大の弱点です。
「簡単」「すぐ使える」という言葉の落とし穴
eSIMの説明文には、よくこんな言葉が並びます。
- 数分で完了
- 初心者でも安心
- 簡単設定
一見、親切そうです。
でも、ここで一つ考えてみてください。

何ができたら“完了”なんでしょう?
この答えは、ほとんど書かれていません。
人は、情報が足りないと
自分で勝手に補って判断します。
そして不安なときほど、
「まあ大丈夫だろう」と思ってしまう。
これが、
eSIMで失敗した人が口を揃えて言う
「思ってたのと違った」 の正体です。
誤解しないでほしいこと
ここで、はっきりさせておきます。
eSIMが悪いわけではありません。
実際、こんな人には向いています。
- スマホ操作が好き
- トラブルも自己解決できる
- 英語の案内に抵抗がない
- 「まあ何とかなる」が口癖
もし「それ、自分だ」と感じたなら、
eSIMは良い選択です。
ただし──
一瞬でも、こんな気持ちがよぎったなら。
「失敗したらどうしよう」
その感覚は、無視しないほうがいい。
シニアにとって大事なのは「安心できる余白」
旅先で一番つらいのは、
通信トラブルそのものではありません。
- 家族に連絡できない不安
- 誰にも頼れない心細さ
- 「自分の判断が間違っていたかも」という後悔
これらは、
楽しみだった旅の記憶を一瞬で塗り替えます。
だからこそ、
多少荷物が増えても
多少お金がかかっても
「困ったら人に聞ける通信手段」
を選ぶ価値があります。
よくある質問
若い人はみんなeSIMを使っていますが、シニアでも慣れれば問題ありませんか?
慣れれば使える方もいます。ただし重要なのは「慣れるまでの過程を旅先で踏めるかどうか」です。移動や環境変化で疲れやすい旅行中は、新しい設定に挑戦する負担が想像以上に大きくなります。
日本にいるうちに設定しておけば、現地で困ることはありませんか?
事前設定は有効ですが、それでも想定外は起こります。eSIMは現地到着後に有効化されるケースや、回線切り替えが必要な場合もあり、「家では使えたのに現地で繋がらない」という例は珍しくありません。
サポートに連絡すれば、トラブルは解決できますか?
解決する場合もありますが、チャット対応のみ・日本語非対応・ログイン必須といった条件があります。すでにネットが繋がらない状態では、サポートに辿り着くこと自体が難しくなる点に注意が必要です。
料金が安いのは、やはりeSIMの大きなメリットでは?
短期利用では料金面のメリットは確かにあります。ただしシニア世代の場合、数百円〜数千円の差と引き換えに「安心感」を失ってしまうケースもあります。旅の満足度を重視するなら慎重に考えたいポイントです。
それでもeSIMを使ってみたい場合はどうすればいいですか?
無理に避ける必要はありません。設定やトラブル対応に抵抗がない場合は選択肢になります。ただし、予備の通信手段を用意したり、家族と設定手順を共有するなど「失敗しても戻れる準備」をしておくと安心です。
結局、シニアにとって一番大切なポイントは何ですか?
一番大切なのは「困ったときに人に頼れるかどうか」です。通信手段は安さや新しさよりも、安心して使えて、忘れていられることが旅全体の満足度につながります。
それでも、どうしてもeSIMを使ってみたいあなたへ
ここまで読んで、
「やっぱりeSIMは不安かもしれない」
そう感じたかもしれません。
一方で、
「それでも一度は使ってみたい」
「できれば荷物は増やしたくない」
そんな気持ちも、どこかにありませんか。
どちらでも不思議ではありません。
迷っている時点で、あなたは慎重に考えています。
もしeSIMを試すなら、
“安さ”よりも“迷わなさ”を重視するほうが安心です。
設定の途中で「これで合っているのかな?」と
立ち止まらなくて済むかどうかが、意外と大きな差になります。
その点で、選択肢の一つとして挙げられるのが
trifa(トリファ)です。
アプリで状態が確認でき、日本語前提の設計なので、
「今どうなっているのか」が把握しやすいのが特徴です。
もちろん、これで不安がゼロになるわけではありません。
それでも、
「完全に自己責任なeSIM」よりは、
少しだけ安心できる選択肢、と考えることもできます。
もし少しでも不安が残るなら、
無理にeSIMにこだわらなくて大丈夫です。
あなたにとって安心できる方法を選ぶこと自体が、
いちばん後悔の少ない選択です。
まとめ:eSIMを使わないのは、逃げではない
eSIMは、
使える人にとっては素晴らしい仕組みです。
でも、
- 迷わないこと
- 焦らないこと
- 失敗しても立て直せること
これを重視するなら、
あえてeSIMを選ばない判断は、とても賢い。
それは、
自分の性格や年齢を受け入れた
大人の選択 です。


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