【実話レビュー】65歳男性が妻と1ヶ月の温泉地リゾートバイトへ── 得たもの、手放したもの、そして小さな失敗

リゾードバイト

「今日って、何か予定あったっけ?」

神奈川県の郊外にある自宅で、
65歳の男性が、いつもの朝を迎えていました。

定年から2年。
週に数日は近所の工場でパートをし、
週末は趣味の釣りに出かける。

特別に不満があるわけではない。
けれど、どこか同じ日が繰り返されているような感覚が、
少しずつ積み重なっていたといいます。

旅行は好き。特に温泉。
ただ最近は、
「行って、帰って、また同じ日常に戻る」
その繰り返しに、物足りなさを感じていました。

そんなある日、
奥さんがふと口にした一言が、
彼らの選択を大きく変えることになります。

「観光じゃなくて、
少し“暮らすみたいに旅”できたらいいのにね」

この記事は、
実際にリゾートバイトを経験した65歳のシニア男性、佐藤さん(仮名)に、
その1ヶ月を振り返ってもらった“実話レビュー”
です。

楽しかったことだけでなく、
「正直、これは失敗だった」と感じた点も含めて、
申し込む前に知っておいてほしい話を、
率直に語っていただきました。

※個人が特定されないよう、施設名など一部の情報は伏せています。

  1. 第1章|「リゾートバイト シニア」で検索して、正直ちょっと怖くなった
  2. 第2章|夫婦で話し合った5つの不安と、決め手になった「子どもの一言」
    1. ① 体力的に、本当に無理はないのか
    2. ② 夫婦で同じ場所・同じ部屋で過ごせるのか
    3. ③ 生活環境や食事は合うのか
    4. ④ 契約や給料は、ちゃんと分かる形なのか
    5. ⑤ 家を1ヶ月空けて、本当に大丈夫か
  3. 第3章|無料面談で確認したこと──不安が消えた点、甘く見ていた点
    1. 面談で実際に聞いたこと①|体力面はどこまで配慮してもらえるのか
    2. 面談で実際に聞いたこと②|夫婦で同じ職場・同じ部屋は可能か
    3. 面談で実際に聞いたこと③|生活環境と食事のリアル
    4. 正直、甘く見ていたこと|お金の話は“想像より細かい”
  4. 第4章|不安は消えなかった。それでも「行こう」と決めた理由
    1. 不安①|家を1ヶ月空ける問題はどうしたか
    2. 不安②|今のパート仕事はどうしたのか
    3. 不安③|それでも残る「もし合わなかったら」という気持ち
    4. 決め手になったのは「期間」だった
  5. 第5章|2024年11月、長野県の温泉地で始まった1ヶ月の暮らし
    1. 到着して最初に感じたこと|“旅行”とは全然違う
    2. 仕事の内容と1日の流れ|想像より“淡々としていた”
    3. 若いスタッフとの距離感|無理に仲良くならなくていい
    4. 休みの日の過ごし方|“観光しなくても満たされる”
    5. 正直、想像と違ったこと|温泉は“毎日入るわけじゃない”
    6. 1週間経って感じたこと|「続けられるかも」と思えた
  6. 第6章|正直、ここは失敗だった。それでも後悔していない理由
    1. 失敗①|最初の数日、少し頑張りすぎた
    2. 失敗②|「家を空ける不安」は、想像以上に気になった
    3. 失敗③|お金は「思ったより増えない」
    4. それでも後悔していない理由|“失敗できる余地”があった
    5. 1ヶ月を終えて、夫婦で交わした言葉
  7. 第7章|60代の私たちが「それでも行ってよかった」と思えた理由
    1. 私たちが得たもの①|「役割」がある日々
    2. 私たちが得たもの②|夫婦で“同じ時間”を過ごした感覚
    3. 私たちが得たもの③|「まだできる」という実感
    4. 手放したもの①|「もう年だから」という思い込み
    5. 手放したもの②|「失敗してはいけない」という構え
    6. これは「移住」でも「就職」でもなかった
  8. 最終章|正直に言います。向いている人/向いていない人
    1. こんな人には、向いていると思います
      1. ①「完璧な条件」を求めすぎない人
      2. ② 体力に合わせて“引く判断”ができる人
      3. ③ 「観光」より「暮らし」を楽しめる人
      4. ④ 夫婦で“同じ経験”をしたい人
    2. 正直、こんな人には向いていないかもしれません
      1. ① 「思ったより稼げない」と感じやすい人
      2. ② 環境の変化が強いストレスになる人
      3. ③ 「失敗したくない」気持ちが強すぎる人
    3. 私たち夫婦が、今思っていること

第1章|「リゾートバイト シニア」で検索して、正直ちょっと怖くなった

実は、「リゾートバイト」という言葉自体は、
ずっと前から知っていました。

若い頃、テレビやネットで
「住み込みで働きながら旅行できる」
という話を見たことがあったからです。

ただ、そのときの印象は今でもはっきりしています。

「これは若い人の世界だろう」

体力もあるし、友達もできやすい。
自分のような60代が入っていく場所ではない。
正直、そう思っていました。

それでも気になって、
ある夜、スマートフォンでこんな言葉を打ち込みました。

「リゾートバイト シニア」

すると、思ったよりも多くの記事が出てきたんです。

  • シニア歓迎
  • 50代・60代活躍中
  • 夫婦応募OK

「本当かな?」
最初に浮かんだのは、そんな疑いでした。

というのも、
体験談を読んでいくと、楽しそうな話ばかりが並んでいたからです。

  • 人間関係が良かった
  • 温泉に毎日入れた
  • 若い人ともすぐ打ち解けた

もちろん、悪いことではありません。
でも、私は逆にこう思ってしまいました。

「失敗した人の話は、どこにあるんだろう?」

年齢的に、
「合わなかったらすぐやめればいい」と
気軽に考えられないのが正直なところです。

体力のこと。
健康のこと。
知らない土地で暮らす不安。

ひとつでも想定外があると、
それだけで負担が大きくなります。

だから私は、
「感想」や「おすすめ」よりも、
“実際どうだったのか”が知りたかった。

特に気になっていたのは、こんな点です。

  • 本当に体力的に大丈夫なのか
  • 若い人の中で浮かないのか
  • 仕事がきつかった場合、相談できるのか
  • 契約や給料はきちんとしているのか

スマホで記事を読んでは閉じ、
また別の記事を開く。
そんなことを、何日か繰り返していました。

今思えば、
その時点で私はもう、
「行かない理由」ではなく
「失敗しない条件」を探していた

のだと思います。

〈編集者より〉

佐藤さんがこの時点で感じていた不安は、サイトに寄せられる相談の中でも、特に多いものです。

「本当にシニアでも働けるのか」
「どんな人たちが現場にいるのか」
といった点が気になる方は、
以下の記事で、もう少し整理して解説しています。

それでも、
この時点では「やめておこう」と
結論を出す決定打にはなりませんでした。

そんなとき、
妻との何気ない会話が、次の一歩につながります。

第2章|夫婦で話し合った5つの不安と、決め手になった「子どもの一言」

正直に言うと、
この時点でも私はまだ、
「リゾートバイトに行こう」と決めていたわけではありません。

むしろ、
一人で勝手に盛り上がっているだけなのでは
という気持ちもありました。

だからある晩、
きちんと妻と向き合って話すことにしました。

「もし行くとしたら、何が心配か」
思いつくまま、紙に書き出していったのが次の5つです。

① 体力的に、本当に無理はないのか

これが一番大きな不安でした。

若い頃の感覚で動くと、
翌日に疲れがどっと出ることもあります。

  • 立ちっぱなしの仕事は続くのか
  • 休憩はちゃんと取れるのか
  • 「きつい」と言い出せる雰囲気なのか

妻も同じように、
「無理して倒れたら意味がないよね」と言っていました。

② 夫婦で同じ場所・同じ部屋で過ごせるのか

これは想像以上に重要でした。

若い人なら気にならないかもしれませんが、
この年齢になると、

  • 知らない土地
  • 知らない人ばかり
  • 部屋も別々

となると、それだけで気疲れします。

「せめて、
一緒に寝起きできる環境じゃないと続かない

これは、夫婦で意見が一致しました。

③ 生活環境や食事は合うのか

仕事そのものより、
実は生活の方が心配でした。

  • 部屋は落ち着けるのか
  • 食事は毎日どうなるのか
  • コンビニや病院は近くにあるのか

旅行なら我慢できますが、
1ヶ月“暮らす”となると話は別です。

④ 契約や給料は、ちゃんと分かる形なのか

年金生活に入ると、
お金のトラブルは精神的にこたえます。

  • 時給はいくらか
  • 何が引かれるのか
  • いつ支払われるのか

「働いてみたら話が違った」
それだけは避けたい、という思いがありました。

⑤ 家を1ヶ月空けて、本当に大丈夫か

最後は、現実的な問題です。

  • 防犯は大丈夫か
  • 郵便物はどうするか
  • 何かあったとき、すぐ戻れるか

妻は特に、
「家を空けること自体」に不安を感じていました。

ここまで書き出して、
私たちは一度、手が止まりました。

「やっぱり、無理なのかな」

そう思いかけたとき、
ふと、月に何度かやり取りしている
息子の顔が浮かびました。

その夜、LINEで
正直な気持ちをそのまま送ってみたんです。

しばらくして返ってきたのは、
意外なほど軽い一言でした。

「いきなり決めなくていいじゃん。
まず話だけ聞いてみたら?
合わなかったら断ればいいんだし」

その言葉を見たとき、
肩の力がすっと抜けました。

そうか。
“行くかどうか”を決めなくてもいいんだ。

  • 申し込む前に
  • 働く前に
  • 断る前提でも

話を聞くだけなら、
別にリスクはない。

妻も、少し考えてから言いました。

「確かに、
話を聞いたうえでやめるなら、それでいいよね」

こうして私たちは、
「まずは情報を集めるだけ」
という気持ちで、
無料の相談(面談)を受けることにしました。

〈編集者より〉

ここで佐藤さん夫妻が整理した5つの不安は、
実際に多くのシニア夫婦が
リゾートバイト検討時に必ずぶつかるポイントです。

特に、

  • 夫婦で同じ職場・同室で働けるのか
  • 事前に何を話し合っておくべきか

は、あとから後悔しやすい部分でもあります。

同じような状況の方は、
以下の記事で具体的な事例や考え方をまとめています。

第3章|無料面談で確認したこと──不安が消えた点、甘く見ていた点

無料面談を受けると決めたとはいえ、
正直なところ、少し身構えていました。

「うまく丸め込まれないかな」
「年齢を言った瞬間、態度が変わらないかな」

そんな気持ちがあったのも事実です。

面談は、
電話で30分ほど
相手は若い方でしたが、
こちらの話を遮ることなく、落ち着いた印象でした。

最初に聞かれたのは、
これまでの仕事や年齢、健康状態など。

私は正直に言いました。

「65歳です。
 体力には自信はありません。
 無理のない範囲で、夫婦で一緒に働ける場所を探しています」

すると、返ってきた言葉は、
少し意外なものでした。

「もちろん案件によって違いますが、まずは条件を整理して、合いそうなものを一緒に探していきましょう」

そんな感じで、いきなり押してくるというより、こちらの希望を前提に話を進めてくれました。

この一言で、
緊張がかなり和らいだのを覚えています。

面談で実際に聞いたこと①|体力面はどこまで配慮してもらえるのか

まず最初に確認したのは、やはり体力のことです。

  • 1日の勤務時間はどれくらいか
  • 立ち仕事が続くのか
  • 途中で仕事を変えてもらえる可能性はあるのか

担当の方は、
「シニアの方の場合は、
 最初からフルタイム前提では組みません」
とはっきり言ってくれました。

具体的には、

  • 1日5〜6時間程度
  • 中抜けあり
  • 立ちっぱなしにならない職種を優先

という説明でした。

ここで私が気づいたのは、
“遠慮せずに前提条件を出すことが大事”
ということです。

「できれば楽な仕事で…」ではなく、
「これ以上は難しい」というラインを
最初に伝えておく。

これを曖昧にすると、
あとで自分が苦しくなると思いました。

面談で実際に聞いたこと②|夫婦で同じ職場・同じ部屋は可能か

次に確認したのが、
夫婦での受け入れ条件です。

正直、
「職場は一緒でも、部屋は別」
というケースも覚悟していました。

担当の方の答えはこうでした。

「同室希望であれば、
その条件で探します。
ただし、案件は少し絞られます」

ここで重要だと感じたのは、
“できる・できない”を曖昧にしない姿勢でした。

  • できる場合
  • 難しい場合
  • 妥協点

をきちんと説明してもらえたことで、
「話が違う」という事態は避けられそうだと感じました。

面談で実際に聞いたこと③|生活環境と食事のリアル

意外と長く話したのが、
生活面と食事のことです。

  • 部屋は個室か
  • トイレ・風呂は共同か
  • 食事は出るのか
  • 毎日同じ内容なのか

ここは、
“働く”より“暮らす”に近い感覚
確認しておいて本当に良かったと思います。

特に妻が気にしていたのは、食事でした。

「毎日コンビニだったら、続かないよね」

担当の方からは、
「従業員食堂で1日2食付き」
という説明があり、
これが安心材料になりました。

正直、甘く見ていたこと|お金の話は“想像より細かい”

一方で、
「これはちゃんと聞いておいてよかった」
と思った点もあります。

それが、給料と控除の話です。

  • 寮費
  • 食費
  • 水道光熱費

求人票では
「無料」「実質無料」と書かれていても、
細かい条件は案件ごとに違います。

担当の方から説明を受けて、
「思ったより手取りは少ないかもしれない」
と感じたのも事実でした。

ただ、
事前に分かったことで
「後悔」にはなりませんでした。

面談が終わったあと、
私は妻にこう言いました。

「思ってたより、ちゃんとしてたな」

妻も、同じ感想だったようです。

「少なくとも、
 よく分からないまま放り出される感じはしなかったね」

この時点で、
不安がゼロになったわけではありません。

でも、

  • 何が分かって
  • 何が分からないままか

が整理できた。

それだけでも、
大きな前進だったと思います。

〈編集者より〉

佐藤さんが面談で確認したポイントは、
シニア世代がリゾートバイトを検討する際に
特にトラブルになりやすい部分です。

  • 体力配慮の具体条件
  • 夫婦同室の可否
  • 生活費として何が引かれるのか

これらは、
「書いてあるから大丈夫」ではなく、
必ず言葉で確認することが重要です。

実際の面談の進め方や、
質問のコツについては、
以下の記事でより詳しく整理しています。

第4章|不安は消えなかった。それでも「行こう」と決めた理由

無料面談が終わったあと、
正直に言うと、
不安が全部なくなったわけではありません。

むしろ、
「行けそうな気もするけど、まだ怖い」
そんな状態でした。

それでも、
私たち夫婦は最終的に
「今回は行ってみよう」
と決めました。

勢いではありません。
ちゃんと、現実的な整理をした上での決断です。

不安①|家を1ヶ月空ける問題はどうしたか

これが最後まで残った不安でした。

特に妻は、
「何かあったらどうするの?」
と何度も言っていました。

最終的に私たちがやったのは、
とても地味で、現実的な対策です。

  • 郵便物は一時停止
  • 近所の方に一言伝えておく
  • 何かあれば、すぐ連絡が来る体制を作る

そしてもう一つ、
息子にお願いしました。

「週末だけでいいから、
 家の様子を見に行ってもらえないか」

特別なことは頼んでいません。

  • 郵便物が溜まっていないか
  • 窓や戸締まりに異常がないか
  • 何か変わったことがないか

それだけです。

息子は、
「それくらいなら全然いいよ」
と、あっさり引き受けてくれました。

完璧な対策ではありません。

でも、
“誰かが気にかけてくれている”
という安心感は、想像以上に大きかった。

これでようやく、
「家を空けること」への不安が、
現実的な大きさに収まりました。

不安②|今のパート仕事はどうしたのか

私は定年後、
近所の工場で短時間のパートをしていました。

ここも、
行く前にきちんと話しました。

「1ヶ月ほど、
 家を空けることになるかもしれません」

結果は、
意外とあっさりしたものでした。

「分かりました。
戻ってきたら、また声かけてください」

定年後のパートだからこそ、
一度リセットできる余地があった

この点は、
現役バリバリで働いている方とは
条件が違うと思います。

でも少なくとも、
「仕事を失う覚悟」までは
必要ありませんでした。

不安③|それでも残る「もし合わなかったら」という気持ち

最後まで消えなかったのが、これです。

  • 人間関係が合わなかったら?
  • 思ったよりきつかったら?
  • 気持ちが沈んだら?

ここで私たちが
一つだけ決めたルールがあります。

「無理だと思ったら、途中でやめる」

逃げ道を最初から作っておく。

これが、
決断できた一番の理由だったかもしれません。

決め手になったのは「期間」だった

最終的に背中を押したのは、
1ヶ月という期間でした。

  • 永住ではない
  • 移住でもない
  • 就職でもない

「1ヶ月だけ、
 違う場所で暮らしてみる」

このくらいなら、
人生を大きく狂わせる選択ではない
そう思えたのです。

妻も、同じでした。

「1ヶ月なら、
 ダメでも戻ってこれるよね」

この言葉で、
ようやく腹が決まりました。

不安はありました。
でもそれは、

  • 考えすぎだから消したのではなく、
  • 条件を整理したから付き合える不安になった

という感覚です。

こうして私たちは、
2024年11月、
長野県の温泉地へ向かうことになります。

〈編集者より〉

この「決断までの整理」は、
シニア世代のリゾートバイト検討で
最も再現性が高いプロセスです。

  • 不安は消さない
  • 条件で囲う
  • 逃げ道を先に作る

この考え方を知っているだけで、
判断の重さは大きく変わります。

「行くかどうか」を決める前に
一度整理したい方は、
以下の記事も参考になります。

第5章|2024年11月、長野県の温泉地で始まった1ヶ月の暮らし

こうして私たちは、
家のことも、仕事のことも、気がかりだった点を一通り整理したうえで、
2024年11月上旬、長野県の山あいにある温泉地へ向かいました。

不安がゼロになったわけではありません。
ただ、「何が心配で、どう対処するか」を
自分たちなりに言葉にできた状態でした。

だからでしょうか。
当日、荷物を車に積み込んでいるときも、
思ったより気持ちは落ち着いていました。

妻が言った一言を覚えています。

「ちゃんと考えたうえで行くんだし、大丈夫でしょ」

私たち夫婦が向かったのは、
2024年11月上旬
場所は、長野県の山あいにある温泉地でした。

紅葉の名残と、冬支度が始まる時期で、現場も“人手が欲しい”タイミングだったそうです。

有名観光地ほど人は多くなく、
かといって寂しすぎるわけでもない。
地元の方の生活と、観光がほどよく混ざった場所です。

駅から車で少し走ると、
空気が一気に変わるのが分かりました。

「寒いな」

そう口にした私に、
妻が笑いながら言いました。

「もう神奈川とは季節が違うね」

到着して最初に感じたこと|“旅行”とは全然違う

初日は、
担当の方から簡単な説明を受けて、
寮に案内されました。

部屋は、
想像していたよりずっと質素です。

  • テレビ
  • 小さな冷蔵庫
  • 布団
  • 最低限の収納

ホテルの部屋とは違う。
でも、不思議と落ち着きました。

「ここで“暮らす”んだな」

旅行気分が一気に抜けて、
生活モードに切り替わった瞬間でした。

仕事の内容と1日の流れ|想像より“淡々としていた”

仕事は、
1日5〜6時間ほど

私の場合は、
午前中から昼過ぎまでが中心でした。

内容は、
裏方の軽作業がメインです。

  • 簡単な準備
  • 片付けの手伝い
  • 指示されたことを、黙々とこなす

派手さはありません。
「やりがい」を声高に感じる仕事でもない。

でも、その分、
無理がない

これが一番大きかったと思います。

若い人たちのように、
テキパキ動けなくても、
急かされることはありませんでした。

若いスタッフとの距離感|無理に仲良くならなくていい

行く前は、
「若い人ばかりだったらどうしよう」
という不安がありました。

実際、
スタッフの多くは20代でした。

ただ、
思っていたような気まずさはありません。

  • 必要な会話だけ
  • 挨拶はきちんと
  • 深く踏み込まない

この距離感が、
私たち夫婦にはちょうどよかった。

無理に若者の輪に入らなくても、
浮くことはありませんでした。

むしろ、
地元の年配スタッフの方が、
よく声をかけてくれました。

「寒くなってきたね」
「温泉、今日はいい湯だよ」

そんな何気ない一言が、
心に残ります。

休みの日の過ごし方|“観光しなくても満たされる”

休日は、
観光地らしいことをするよりも、
近所を歩くことが多かったです。

  • 直売所で野菜を買う
  • 小さな食堂で昼ごはん
  • 川沿いを散歩

特別なことはしていません。

それでも、
「今日はいい一日だったな」
と思える不思議さがありました。

妻がぽつりと言った言葉を、
今でも覚えています。

「旅行より、疲れないね」

たしかに、
詰め込みすぎない分、
気持ちに余裕がありました。

正直、想像と違ったこと|温泉は“毎日入るわけじゃない”

これは少し意外でした。

温泉地にいるのだから、
毎日温泉に入るものだと思っていました。

でも実際は、
仕事の後は意外と疲れています。

  • 今日はいいか
  • 明日にしよう

そんな日も多かった。

「温泉入り放題」という言葉だけで
期待しすぎると、
少し拍子抜けするかもしれません。

でも、
入りたいときに入れる。
それだけで十分でした。

1週間経って感じたこと|「続けられるかも」と思えた

1週間が過ぎたころ、
私はふと、こんなことを思いました。

「これなら、1ヶ月いけそうだな」

最初の数日は、
気も張っていました。

でも、
生活のリズムができると、
不安は少しずつ薄れていきます。

妻も同じだったようです。

「思ったより、普通だね」

その“普通さ”が、
このリゾートバイトの一番良いところだったのかもしれません。

〈編集者より〉

佐藤さん夫妻の話を聞いていて印象的だったのは、
「楽しかった」「感動した」という言葉より、
「続けられそう」「疲れすぎない」
という表現が多かった点です。

シニア世代のリゾートバイトでは、
派手さよりも、

  • 生活リズム
  • 人との距離感
  • 無理のなさ

が満足度を大きく左右します。

「どんな職種なら負担が少ないのか」
「夫婦でどんな環境が向いているのか」
を具体的に知りたい方は、
以下の記事も参考になります。

第6章|正直、ここは失敗だった。それでも後悔していない理由

リゾートバイトの1ヶ月を振り返って、
「すべてが完璧だった」と言うつもりはありません。

むしろ、
やってみて初めて分かった“小さな失敗”はいくつかありました。

ただ、不思議なことに、
それでも「行かなければよかった」とは思わなかった。

その理由も含めて、
正直に書いておこうと思います。

失敗①|最初の数日、少し頑張りすぎた

これは完全に、
自分の見積もりが甘かった点です。

「若い人と同じようにやろう」
そんなつもりはなかったのですが、
最初はどうしても力が入ってしまいました。

  • 頼まれたことを全部引き受ける
  • 休憩時間も、あまり座らない
  • 「大丈夫です」が口癖になる

結果、
3日目の夜にどっと疲れが出ました。

「このペースは無理だな」

そう感じて、
思い切って担当の方に伝えました。

「少しペースを落としたいです」

すると、
あっさり調整してもらえたんです。

ここで学んだのは、
“最初から頑張らない勇気”が必要だということでした。

失敗②|「家を空ける不安」は、想像以上に気になった

もうひとつ、意外だったのがこれです。

仕事や生活には慣れてきたのに、
夜になるとふと、家のことが気になる。

  • 戸締まりは大丈夫か
  • 郵便物は溜まっていないか
  • 何かあったらすぐ戻れるか

頭では分かっていても、
気持ちは別でした。

特に、
最初の1週間はこの不安が強かったと思います。

ただ、
これも時間と工夫で落ち着きました。

  • 近所の方に一言伝えておく
  • 郵便の一時停止
  • 毎週息子に家の様子を確認してもらえる

「対策をしている」という事実が、
気持ちをかなり楽にしてくれました。

失敗③|お金は「思ったより増えない」

正直なところ、
収入面では期待しすぎていた部分がありました。

  • 寮費
  • 食費
  • 細かな控除

すべて差し引くと、
月に手元に残る金額は、想像より控えめです。

ただ、それを
「失敗だった」とは感じませんでした。

理由は簡単で、
生活費がほとんどかからなかったからです。

家にいれば、
光熱費も食費もかかります。

それが抑えられた分、
「減らなかった」という安心感がありました。

それでも後悔していない理由|“失敗できる余地”があった

今振り返って思うのは、
このリゾートバイトは、

  • 取り返しがつかない失敗
  • 人生を左右する決断

ではなかった、ということです。

もし合わなければ、
途中でやめる選択もあった。

条件が違えば、
次は行かない、という判断もできた。

やり直しがきく。

この余白があったからこそ、
失敗しても、
「やってみてよかった」と思えたのだと思います。

1ヶ月を終えて、夫婦で交わした言葉

最終日、
荷物をまとめながら、
妻が言いました。

「疲れたけど、
家にいるだけよりは、ずっと良かったね」

私も同じ気持ちでした。

完璧じゃない。
でも、確かに得たものがあった。

  • 同じ時間を過ごした感覚
  • 生活に張りが戻ったこと
  • 「まだできる」という実感

それだけで、
この1ヶ月には意味があったと思います。

〈編集者より〉

佐藤さんの話で印象的だったのは、
「失敗=後悔」になっていない点でした。

シニア世代のリゾートバイトでは、
失敗をゼロにすることよりも、

  • 失敗の“種類”を選ぶ
  • 取り返しがつくかどうか
  • 事前に想定できるか

の方が、ずっと重要です。

「失敗しないための準備」や
「自分たちに合う条件の見極め方」を
より具体的に知りたい方は、
以下の記事も参考になります。

第7章|60代の私たちが「それでも行ってよかった」と思えた理由

── 得たものと、手放したもの

1ヶ月のリゾートバイトを終えて、
家に戻った翌朝。

久しぶりに自分たちの家の布団で目を覚ましながら、
私は少し不思議な感覚を覚えました。

「また日常に戻った」というより、
「日常が少し変わった」
そんな感じです。

この1ヶ月で、
何か大きな成果を出したわけではありません。

でも、確かに
得たもの
手放したものがありました。

私たちが得たもの①|「役割」がある日々

定年後、
時間はたくさんありました。

でも正直に言うと、
「自分が今日、何の役に立ったか」
を感じる場面は、そう多くありませんでした。

リゾートバイトでは、
仕事は小さなものばかりです。

  • 準備
  • 片付け
  • 裏方の手伝い

それでも、
「あなたがいて助かりました」
と言われることがある。

この一言が、
想像以上に心に残りました。

私たちが得たもの②|夫婦で“同じ時間”を過ごした感覚

一緒に暮らしていても、
普段はそれぞれの時間があります。

でもこの1ヶ月は違いました。

  • 同じ場所で働き
  • 同じ空気を吸い
  • 同じ出来事を共有する

夜、部屋で
「今日さ…」
と自然に会話が始まる。

特別な話じゃなくても、
話題が“共通の体験”から生まれる
この感覚は、久しぶりでした。

私たちが得たもの③|「まだできる」という実感

若い頃と同じようには動けません。

それでも、

  • 無理のない範囲なら
  • 条件を選べば

まだ新しいことに挑戦できる

この実感は、
これから先の生活を考えるうえで、
大きな支えになりました。

手放したもの①|「もう年だから」という思い込み

行く前は、
何かにつけて年齢を理由にしていました。

  • 若い人の迷惑になる
  • 体力的に無理
  • 今さら新しい環境はしんどい

もちろん、
無理は禁物です。

でも、
“何もかも無理”ではなかった

この思い込みを一つ手放せただけでも、
大きな収穫だったと思います。

手放したもの②|「失敗してはいけない」という構え

この年齢になると、
失敗が怖くなります。

でも今回、
小さな失敗をして分かりました。

  • 取り返しはつく
  • 修正はできる
  • やめる選択もある

「完璧に準備してから動く」
ではなく、
「動きながら調整する」
という考え方を、久しぶりに思い出しました。

これは「移住」でも「就職」でもなかった

よく聞かれます。

「また行きたいですか?」
「次は長期ですか?」

正直なところ、
まだ分かりません。

でも一つ、はっきりしているのは、

  • 移住ほど重くない
  • 就職ほど縛られない

“期間限定で、暮らすように過ごす”
という選択肢を知れたこと。

これは、
定年後の生き方を考えるうえで、
大きな視野の広がりでした。

〈編集者より〉

佐藤さん夫妻の体験は、
「リゾートバイトで人生が変わった」
という話ではありません。

むしろ、

  • 少し視界が広がった
  • 選択肢が増えた
  • 不安が言葉にできるようになった

という変化でした。

定年後の過ごし方に
明確な正解はありませんが、
「試せる選択肢」を知っているかどうかで、
安心感は大きく変わります。

リゾートバイト全体の考え方や、
夫婦・シニア向けの整理については、
以下の記事で全体像をまとめています。

最終章|正直に言います。向いている人/向いていない人

ここまで読んでいただいて、
「ちょっとやってみたいかも」
と思った方もいれば、

「やっぱり自分には難しそうだな」
と感じた方もいると思います。

どちらも、間違いではありません。

リゾートバイトは、
誰にでも向いているわけではないからです。

1ヶ月を終えた今、
私たち夫婦なりに
**「向いている人」「向いていない人」**を
正直に整理してみます。

こんな人には、向いていると思います

①「完璧な条件」を求めすぎない人

正直に言うと、
すべてが理想通り、という環境はありませんでした。

  • 部屋は質素
  • 仕事は地味
  • 思ったほど稼げない

それでも、
「まあ、こんなものか」と
受け止められる人なら、続けやすいと思います。

② 体力に合わせて“引く判断”ができる人

頑張りすぎない。
無理を感じたら、口に出す。

これができる人は、
シニアのリゾートバイトに向いています。

逆に、
「頼まれたら断れない」
「若い人と同じようにやらなきゃ」
と思ってしまう人は、
最初に少し苦しくなるかもしれません。

③ 「観光」より「暮らし」を楽しめる人

毎日観光するわけではありません。

  • 近所を散歩する
  • 地元の食堂に入る
  • 何もせず休む

こうした時間を
「もったいない」と感じない人。

むしろ、
こういう時間が好きな人には、
ちょうどいい働き方だと思います。

④ 夫婦で“同じ経験”をしたい人

私たちにとっては、
これが一番大きかったかもしれません。

  • 同じ場所で
  • 同じ期間
  • 同じ出来事を共有する

旅行とも、普段の生活とも違う、
共通の思い出が増えました。

正直、こんな人には向いていないかもしれません

① 「思ったより稼げない」と感じやすい人

収入をメインの目的にすると、
少し物足りなく感じる可能性があります。

  • 手取りは控えめ
  • 控除がある
  • 生活費は抑えられるが、爆発的には増えない

「お金がすべて」という人には、
別の選択肢の方が合うかもしれません。

② 環境の変化が強いストレスになる人

知らない土地。
知らない人。
いつもと違う生活リズム。

これが大きな負担になる人には、
無理におすすめしません。

「合わなかったらやめればいい」
とはいえ、
行く前に自分の性格を
冷静に考えることは大切だと思います。

③ 「失敗したくない」気持ちが強すぎる人

リゾートバイトは、
多少のズレや想定外が起きます。

  • 思った仕事内容と違う
  • 生活が合わない
  • 期待しすぎていた

こうしたことを
“経験”として受け止められるかどうか

失敗をゼロにしたい人には、
少ししんどいかもしれません。

私たち夫婦が、今思っていること

今すぐまた行くかと言われたら、
まだ分かりません。

でも、
「もう一度同じ選択をするか?」
と聞かれたら、
答えはYESです。

なぜなら、
この1ヶ月は、

  • 何かを失った期間ではなく
  • 何かを確かめた期間

だったからです。

定年後の人生は、
長いようで、意外と短い。

だからこそ、
「やらなかった後悔」より
「やってみた結果」を持っておきたい
そう思えるようになりました。

〈編集者より〉

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

佐藤さん夫妻の体験は、
「成功談」でも
「おすすめレビュー」でもありません。

“検討中のシニア夫婦が、判断するための材料”
として紹介しました。

もしあなたが、

  • 少しでも興味がある
  • でも不安が残っている
  • まだ決めきれない

という状態なら、
いきなり申し込む必要はありません。

まずは、

  • 全体像を整理する
  • 条件を知る
  • 話を聞いてみる

その段階で十分です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました