「今日って、何か予定あったっけ?」
神奈川県の郊外にある自宅で、
65歳の男性が、いつもの朝を迎えていました。
定年から2年。
週に数日は近所の工場でパートをし、
週末は趣味の釣りに出かける。
特別に不満があるわけではない。
けれど、どこか同じ日が繰り返されているような感覚が、
少しずつ積み重なっていたといいます。
旅行は好き。特に温泉。
ただ最近は、
「行って、帰って、また同じ日常に戻る」
その繰り返しに、物足りなさを感じていました。
そんなある日、
奥さんがふと口にした一言が、
彼らの選択を大きく変えることになります。
「観光じゃなくて、
少し“暮らすみたいに旅”できたらいいのにね」
この記事は、
実際にリゾートバイトを経験した65歳のシニア男性、佐藤さん(仮名)に、
その1ヶ月を振り返ってもらった“実話レビュー” です。
楽しかったことだけでなく、
「正直、これは失敗だった」と感じた点も含めて、
申し込む前に知っておいてほしい話を、
率直に語っていただきました。
※個人が特定されないよう、施設名など一部の情報は伏せています。
第1章|「リゾートバイト シニア」で検索して、正直ちょっと怖くなった
実は、「リゾートバイト」という言葉自体は、
ずっと前から知っていました。
若い頃、テレビやネットで
「住み込みで働きながら旅行できる」
という話を見たことがあったからです。
ただ、そのときの印象は今でもはっきりしています。
「これは若い人の世界だろう」
体力もあるし、友達もできやすい。
自分のような60代が入っていく場所ではない。
正直、そう思っていました。
それでも気になって、
ある夜、スマートフォンでこんな言葉を打ち込みました。
「リゾートバイト シニア」
すると、思ったよりも多くの記事が出てきたんです。
- シニア歓迎
- 50代・60代活躍中
- 夫婦応募OK
「本当かな?」
最初に浮かんだのは、そんな疑いでした。
というのも、
体験談を読んでいくと、楽しそうな話ばかりが並んでいたからです。
- 人間関係が良かった
- 温泉に毎日入れた
- 若い人ともすぐ打ち解けた
もちろん、悪いことではありません。
でも、私は逆にこう思ってしまいました。
「失敗した人の話は、どこにあるんだろう?」
年齢的に、
「合わなかったらすぐやめればいい」と
気軽に考えられないのが正直なところです。
体力のこと。
健康のこと。
知らない土地で暮らす不安。
ひとつでも想定外があると、
それだけで負担が大きくなります。
だから私は、
「感想」や「おすすめ」よりも、
“実際どうだったのか”が知りたかった。
特に気になっていたのは、こんな点です。
- 本当に体力的に大丈夫なのか
- 若い人の中で浮かないのか
- 仕事がきつかった場合、相談できるのか
- 契約や給料はきちんとしているのか
スマホで記事を読んでは閉じ、
また別の記事を開く。
そんなことを、何日か繰り返していました。
今思えば、
その時点で私はもう、
「行かない理由」ではなく
「失敗しない条件」を探していた
のだと思います。
佐藤さんがこの時点で感じていた不安は、サイトに寄せられる相談の中でも、特に多いものです。
「本当にシニアでも働けるのか」
「どんな人たちが現場にいるのか」
といった点が気になる方は、
以下の記事で、もう少し整理して解説しています。
それでも、
この時点では「やめておこう」と
結論を出す決定打にはなりませんでした。
そんなとき、
妻との何気ない会話が、次の一歩につながります。
第2章|夫婦で話し合った5つの不安と、決め手になった「子どもの一言」
正直に言うと、
この時点でも私はまだ、
「リゾートバイトに行こう」と決めていたわけではありません。
むしろ、
一人で勝手に盛り上がっているだけなのでは
という気持ちもありました。
だからある晩、
きちんと妻と向き合って話すことにしました。
「もし行くとしたら、何が心配か」
思いつくまま、紙に書き出していったのが次の5つです。
① 体力的に、本当に無理はないのか
これが一番大きな不安でした。
若い頃の感覚で動くと、
翌日に疲れがどっと出ることもあります。
- 立ちっぱなしの仕事は続くのか
- 休憩はちゃんと取れるのか
- 「きつい」と言い出せる雰囲気なのか
妻も同じように、
「無理して倒れたら意味がないよね」と言っていました。
② 夫婦で同じ場所・同じ部屋で過ごせるのか
これは想像以上に重要でした。
若い人なら気にならないかもしれませんが、
この年齢になると、
- 知らない土地
- 知らない人ばかり
- 部屋も別々
となると、それだけで気疲れします。
「せめて、
一緒に寝起きできる環境じゃないと続かない」
これは、夫婦で意見が一致しました。
③ 生活環境や食事は合うのか
仕事そのものより、
実は生活の方が心配でした。
- 部屋は落ち着けるのか
- 食事は毎日どうなるのか
- コンビニや病院は近くにあるのか
旅行なら我慢できますが、
1ヶ月“暮らす”となると話は別です。
④ 契約や給料は、ちゃんと分かる形なのか
年金生活に入ると、
お金のトラブルは精神的にこたえます。
- 時給はいくらか
- 何が引かれるのか
- いつ支払われるのか
「働いてみたら話が違った」
それだけは避けたい、という思いがありました。
⑤ 家を1ヶ月空けて、本当に大丈夫か
最後は、現実的な問題です。
- 防犯は大丈夫か
- 郵便物はどうするか
- 何かあったとき、すぐ戻れるか
妻は特に、
「家を空けること自体」に不安を感じていました。
ここまで書き出して、
私たちは一度、手が止まりました。
「やっぱり、無理なのかな」
そう思いかけたとき、
ふと、月に何度かやり取りしている
息子の顔が浮かびました。
その夜、LINEで
正直な気持ちをそのまま送ってみたんです。
しばらくして返ってきたのは、
意外なほど軽い一言でした。
「いきなり決めなくていいじゃん。
まず話だけ聞いてみたら?
合わなかったら断ればいいんだし」
その言葉を見たとき、
肩の力がすっと抜けました。
そうか。
“行くかどうか”を決めなくてもいいんだ。
- 申し込む前に
- 働く前に
- 断る前提でも
話を聞くだけなら、
別にリスクはない。
妻も、少し考えてから言いました。
「確かに、
話を聞いたうえでやめるなら、それでいいよね」
こうして私たちは、
「まずは情報を集めるだけ」
という気持ちで、
無料の相談(面談)を受けることにしました。
ここで佐藤さん夫妻が整理した5つの不安は、
実際に多くのシニア夫婦が
リゾートバイト検討時に必ずぶつかるポイントです。
特に、
- 夫婦で同じ職場・同室で働けるのか
- 事前に何を話し合っておくべきか
は、あとから後悔しやすい部分でもあります。
同じような状況の方は、
以下の記事で具体的な事例や考え方をまとめています。
第3章|無料面談で確認したこと──不安が消えた点、甘く見ていた点
無料面談を受けると決めたとはいえ、
正直なところ、少し身構えていました。
「うまく丸め込まれないかな」
「年齢を言った瞬間、態度が変わらないかな」
そんな気持ちがあったのも事実です。
面談は、
電話で30分ほど。
相手は若い方でしたが、
こちらの話を遮ることなく、落ち着いた印象でした。
最初に聞かれたのは、
これまでの仕事や年齢、健康状態など。
私は正直に言いました。
「65歳です。
体力には自信はありません。
無理のない範囲で、夫婦で一緒に働ける場所を探しています」
すると、返ってきた言葉は、
少し意外なものでした。
「もちろん案件によって違いますが、まずは条件を整理して、合いそうなものを一緒に探していきましょう」
そんな感じで、いきなり押してくるというより、こちらの希望を前提に話を進めてくれました。
この一言で、
緊張がかなり和らいだのを覚えています。
面談で実際に聞いたこと①|体力面はどこまで配慮してもらえるのか
まず最初に確認したのは、やはり体力のことです。
- 1日の勤務時間はどれくらいか
- 立ち仕事が続くのか
- 途中で仕事を変えてもらえる可能性はあるのか
担当の方は、
「シニアの方の場合は、
最初からフルタイム前提では組みません」
とはっきり言ってくれました。
具体的には、
- 1日5〜6時間程度
- 中抜けあり
- 立ちっぱなしにならない職種を優先
という説明でした。
ここで私が気づいたのは、
“遠慮せずに前提条件を出すことが大事”
ということです。
「できれば楽な仕事で…」ではなく、
「これ以上は難しい」というラインを
最初に伝えておく。
これを曖昧にすると、
あとで自分が苦しくなると思いました。
面談で実際に聞いたこと②|夫婦で同じ職場・同じ部屋は可能か
次に確認したのが、
夫婦での受け入れ条件です。
正直、
「職場は一緒でも、部屋は別」
というケースも覚悟していました。
担当の方の答えはこうでした。
「同室希望であれば、
その条件で探します。
ただし、案件は少し絞られます」
ここで重要だと感じたのは、
“できる・できない”を曖昧にしない姿勢でした。
- できる場合
- 難しい場合
- 妥協点
をきちんと説明してもらえたことで、
「話が違う」という事態は避けられそうだと感じました。
面談で実際に聞いたこと③|生活環境と食事のリアル
意外と長く話したのが、
生活面と食事のことです。
- 部屋は個室か
- トイレ・風呂は共同か
- 食事は出るのか
- 毎日同じ内容なのか
ここは、
“働く”より“暮らす”に近い感覚で
確認しておいて本当に良かったと思います。
特に妻が気にしていたのは、食事でした。
「毎日コンビニだったら、続かないよね」
担当の方からは、
「従業員食堂で1日2食付き」
という説明があり、
これが安心材料になりました。
正直、甘く見ていたこと|お金の話は“想像より細かい”
一方で、
「これはちゃんと聞いておいてよかった」
と思った点もあります。
それが、給料と控除の話です。
- 寮費
- 食費
- 水道光熱費
求人票では
「無料」「実質無料」と書かれていても、
細かい条件は案件ごとに違います。
担当の方から説明を受けて、
「思ったより手取りは少ないかもしれない」
と感じたのも事実でした。
ただ、
事前に分かったことで
「後悔」にはなりませんでした。
面談が終わったあと、
私は妻にこう言いました。
「思ってたより、ちゃんとしてたな」
妻も、同じ感想だったようです。
「少なくとも、
よく分からないまま放り出される感じはしなかったね」
この時点で、
不安がゼロになったわけではありません。
でも、
- 何が分かって
- 何が分からないままか
が整理できた。
それだけでも、
大きな前進だったと思います。
佐藤さんが面談で確認したポイントは、
シニア世代がリゾートバイトを検討する際に
特にトラブルになりやすい部分です。
- 体力配慮の具体条件
- 夫婦同室の可否
- 生活費として何が引かれるのか
これらは、
「書いてあるから大丈夫」ではなく、
必ず言葉で確認することが重要です。
実際の面談の進め方や、
質問のコツについては、
以下の記事でより詳しく整理しています。
第4章|不安は消えなかった。それでも「行こう」と決めた理由
無料面談が終わったあと、
正直に言うと、
不安が全部なくなったわけではありません。
むしろ、
「行けそうな気もするけど、まだ怖い」
そんな状態でした。
それでも、
私たち夫婦は最終的に
「今回は行ってみよう」
と決めました。
勢いではありません。
ちゃんと、現実的な整理をした上での決断です。
不安①|家を1ヶ月空ける問題はどうしたか
これが最後まで残った不安でした。
特に妻は、
「何かあったらどうするの?」
と何度も言っていました。
最終的に私たちがやったのは、
とても地味で、現実的な対策です。
- 郵便物は一時停止
- 近所の方に一言伝えておく
- 何かあれば、すぐ連絡が来る体制を作る
そしてもう一つ、
息子にお願いしました。
「週末だけでいいから、
家の様子を見に行ってもらえないか」
特別なことは頼んでいません。
- 郵便物が溜まっていないか
- 窓や戸締まりに異常がないか
- 何か変わったことがないか
それだけです。
息子は、
「それくらいなら全然いいよ」
と、あっさり引き受けてくれました。
完璧な対策ではありません。
でも、
“誰かが気にかけてくれている”
という安心感は、想像以上に大きかった。
これでようやく、
「家を空けること」への不安が、
現実的な大きさに収まりました。
不安②|今のパート仕事はどうしたのか
私は定年後、
近所の工場で短時間のパートをしていました。
ここも、
行く前にきちんと話しました。
「1ヶ月ほど、
家を空けることになるかもしれません」
結果は、
意外とあっさりしたものでした。
「分かりました。
戻ってきたら、また声かけてください」
定年後のパートだからこそ、
一度リセットできる余地があった。
この点は、
現役バリバリで働いている方とは
条件が違うと思います。
でも少なくとも、
「仕事を失う覚悟」までは
必要ありませんでした。
不安③|それでも残る「もし合わなかったら」という気持ち
最後まで消えなかったのが、これです。
- 人間関係が合わなかったら?
- 思ったよりきつかったら?
- 気持ちが沈んだら?
ここで私たちが
一つだけ決めたルールがあります。
「無理だと思ったら、途中でやめる」
逃げ道を最初から作っておく。
これが、
決断できた一番の理由だったかもしれません。
決め手になったのは「期間」だった
最終的に背中を押したのは、
1ヶ月という期間でした。
- 永住ではない
- 移住でもない
- 就職でもない
「1ヶ月だけ、
違う場所で暮らしてみる」
このくらいなら、
人生を大きく狂わせる選択ではない
そう思えたのです。
妻も、同じでした。
「1ヶ月なら、
ダメでも戻ってこれるよね」
この言葉で、
ようやく腹が決まりました。
不安はありました。
でもそれは、
- 考えすぎだから消したのではなく、
- 条件を整理したから付き合える不安になった
という感覚です。
こうして私たちは、
2024年11月、
長野県の温泉地へ向かうことになります。
この「決断までの整理」は、
シニア世代のリゾートバイト検討で
最も再現性が高いプロセスです。
- 不安は消さない
- 条件で囲う
- 逃げ道を先に作る
この考え方を知っているだけで、
判断の重さは大きく変わります。
「行くかどうか」を決める前に
一度整理したい方は、
以下の記事も参考になります。
第5章|2024年11月、長野県の温泉地で始まった1ヶ月の暮らし
こうして私たちは、
家のことも、仕事のことも、気がかりだった点を一通り整理したうえで、
2024年11月上旬、長野県の山あいにある温泉地へ向かいました。
不安がゼロになったわけではありません。
ただ、「何が心配で、どう対処するか」を
自分たちなりに言葉にできた状態でした。
だからでしょうか。
当日、荷物を車に積み込んでいるときも、
思ったより気持ちは落ち着いていました。
妻が言った一言を覚えています。
「ちゃんと考えたうえで行くんだし、大丈夫でしょ」
私たち夫婦が向かったのは、
2024年11月上旬。
場所は、長野県の山あいにある温泉地でした。
紅葉の名残と、冬支度が始まる時期で、現場も“人手が欲しい”タイミングだったそうです。
有名観光地ほど人は多くなく、
かといって寂しすぎるわけでもない。
地元の方の生活と、観光がほどよく混ざった場所です。
駅から車で少し走ると、
空気が一気に変わるのが分かりました。
「寒いな」
そう口にした私に、
妻が笑いながら言いました。
「もう神奈川とは季節が違うね」
到着して最初に感じたこと|“旅行”とは全然違う
初日は、
担当の方から簡単な説明を受けて、
寮に案内されました。
部屋は、
想像していたよりずっと質素です。
- テレビ
- 小さな冷蔵庫
- 布団
- 最低限の収納
ホテルの部屋とは違う。
でも、不思議と落ち着きました。
「ここで“暮らす”んだな」
旅行気分が一気に抜けて、
生活モードに切り替わった瞬間でした。
仕事の内容と1日の流れ|想像より“淡々としていた”
仕事は、
1日5〜6時間ほど。
私の場合は、
午前中から昼過ぎまでが中心でした。
内容は、
裏方の軽作業がメインです。
- 簡単な準備
- 片付けの手伝い
- 指示されたことを、黙々とこなす
派手さはありません。
「やりがい」を声高に感じる仕事でもない。
でも、その分、
無理がない。
これが一番大きかったと思います。
若い人たちのように、
テキパキ動けなくても、
急かされることはありませんでした。
若いスタッフとの距離感|無理に仲良くならなくていい
行く前は、
「若い人ばかりだったらどうしよう」
という不安がありました。
実際、
スタッフの多くは20代でした。
ただ、
思っていたような気まずさはありません。
- 必要な会話だけ
- 挨拶はきちんと
- 深く踏み込まない
この距離感が、
私たち夫婦にはちょうどよかった。
無理に若者の輪に入らなくても、
浮くことはありませんでした。
むしろ、
地元の年配スタッフの方が、
よく声をかけてくれました。
「寒くなってきたね」
「温泉、今日はいい湯だよ」
そんな何気ない一言が、
心に残ります。
休みの日の過ごし方|“観光しなくても満たされる”
休日は、
観光地らしいことをするよりも、
近所を歩くことが多かったです。
- 直売所で野菜を買う
- 小さな食堂で昼ごはん
- 川沿いを散歩
特別なことはしていません。
それでも、
「今日はいい一日だったな」
と思える不思議さがありました。
妻がぽつりと言った言葉を、
今でも覚えています。
「旅行より、疲れないね」
たしかに、
詰め込みすぎない分、
気持ちに余裕がありました。
正直、想像と違ったこと|温泉は“毎日入るわけじゃない”
これは少し意外でした。
温泉地にいるのだから、
毎日温泉に入るものだと思っていました。
でも実際は、
仕事の後は意外と疲れています。
- 今日はいいか
- 明日にしよう
そんな日も多かった。
「温泉入り放題」という言葉だけで
期待しすぎると、
少し拍子抜けするかもしれません。
でも、
入りたいときに入れる。
それだけで十分でした。
1週間経って感じたこと|「続けられるかも」と思えた
1週間が過ぎたころ、
私はふと、こんなことを思いました。
「これなら、1ヶ月いけそうだな」
最初の数日は、
気も張っていました。
でも、
生活のリズムができると、
不安は少しずつ薄れていきます。
妻も同じだったようです。
「思ったより、普通だね」
その“普通さ”が、
このリゾートバイトの一番良いところだったのかもしれません。
佐藤さん夫妻の話を聞いていて印象的だったのは、
「楽しかった」「感動した」という言葉より、
「続けられそう」「疲れすぎない」
という表現が多かった点です。
シニア世代のリゾートバイトでは、
派手さよりも、
- 生活リズム
- 人との距離感
- 無理のなさ
が満足度を大きく左右します。
「どんな職種なら負担が少ないのか」
「夫婦でどんな環境が向いているのか」
を具体的に知りたい方は、
以下の記事も参考になります。
第6章|正直、ここは失敗だった。それでも後悔していない理由
リゾートバイトの1ヶ月を振り返って、
「すべてが完璧だった」と言うつもりはありません。
むしろ、
やってみて初めて分かった“小さな失敗”はいくつかありました。
ただ、不思議なことに、
それでも「行かなければよかった」とは思わなかった。
その理由も含めて、
正直に書いておこうと思います。
失敗①|最初の数日、少し頑張りすぎた
これは完全に、
自分の見積もりが甘かった点です。
「若い人と同じようにやろう」
そんなつもりはなかったのですが、
最初はどうしても力が入ってしまいました。
- 頼まれたことを全部引き受ける
- 休憩時間も、あまり座らない
- 「大丈夫です」が口癖になる
結果、
3日目の夜にどっと疲れが出ました。
「このペースは無理だな」
そう感じて、
思い切って担当の方に伝えました。
「少しペースを落としたいです」
すると、
あっさり調整してもらえたんです。
ここで学んだのは、
“最初から頑張らない勇気”が必要だということでした。
失敗②|「家を空ける不安」は、想像以上に気になった
もうひとつ、意外だったのがこれです。
仕事や生活には慣れてきたのに、
夜になるとふと、家のことが気になる。
- 戸締まりは大丈夫か
- 郵便物は溜まっていないか
- 何かあったらすぐ戻れるか
頭では分かっていても、
気持ちは別でした。
特に、
最初の1週間はこの不安が強かったと思います。
ただ、
これも時間と工夫で落ち着きました。
- 近所の方に一言伝えておく
- 郵便の一時停止
- 毎週息子に家の様子を確認してもらえる
「対策をしている」という事実が、
気持ちをかなり楽にしてくれました。
失敗③|お金は「思ったより増えない」
正直なところ、
収入面では期待しすぎていた部分がありました。
- 寮費
- 食費
- 細かな控除
すべて差し引くと、
月に手元に残る金額は、想像より控えめです。
ただ、それを
「失敗だった」とは感じませんでした。
理由は簡単で、
生活費がほとんどかからなかったからです。
家にいれば、
光熱費も食費もかかります。
それが抑えられた分、
「減らなかった」という安心感がありました。
それでも後悔していない理由|“失敗できる余地”があった
今振り返って思うのは、
このリゾートバイトは、
- 取り返しがつかない失敗
- 人生を左右する決断
ではなかった、ということです。
もし合わなければ、
途中でやめる選択もあった。
条件が違えば、
次は行かない、という判断もできた。
やり直しがきく。
この余白があったからこそ、
失敗しても、
「やってみてよかった」と思えたのだと思います。
1ヶ月を終えて、夫婦で交わした言葉
最終日、
荷物をまとめながら、
妻が言いました。
「疲れたけど、
家にいるだけよりは、ずっと良かったね」
私も同じ気持ちでした。
完璧じゃない。
でも、確かに得たものがあった。
- 同じ時間を過ごした感覚
- 生活に張りが戻ったこと
- 「まだできる」という実感
それだけで、
この1ヶ月には意味があったと思います。
佐藤さんの話で印象的だったのは、
「失敗=後悔」になっていない点でした。
シニア世代のリゾートバイトでは、
失敗をゼロにすることよりも、
- 失敗の“種類”を選ぶ
- 取り返しがつくかどうか
- 事前に想定できるか
の方が、ずっと重要です。
「失敗しないための準備」や
「自分たちに合う条件の見極め方」を
より具体的に知りたい方は、
以下の記事も参考になります。
第7章|60代の私たちが「それでも行ってよかった」と思えた理由
── 得たものと、手放したもの
1ヶ月のリゾートバイトを終えて、
家に戻った翌朝。
久しぶりに自分たちの家の布団で目を覚ましながら、
私は少し不思議な感覚を覚えました。
「また日常に戻った」というより、
「日常が少し変わった」
そんな感じです。
この1ヶ月で、
何か大きな成果を出したわけではありません。
でも、確かに
得たものと
手放したものがありました。
私たちが得たもの①|「役割」がある日々
定年後、
時間はたくさんありました。
でも正直に言うと、
「自分が今日、何の役に立ったか」
を感じる場面は、そう多くありませんでした。
リゾートバイトでは、
仕事は小さなものばかりです。
- 準備
- 片付け
- 裏方の手伝い
それでも、
「あなたがいて助かりました」
と言われることがある。
この一言が、
想像以上に心に残りました。
私たちが得たもの②|夫婦で“同じ時間”を過ごした感覚
一緒に暮らしていても、
普段はそれぞれの時間があります。
でもこの1ヶ月は違いました。
- 同じ場所で働き
- 同じ空気を吸い
- 同じ出来事を共有する
夜、部屋で
「今日さ…」
と自然に会話が始まる。
特別な話じゃなくても、
話題が“共通の体験”から生まれる
この感覚は、久しぶりでした。
私たちが得たもの③|「まだできる」という実感
若い頃と同じようには動けません。
それでも、
- 無理のない範囲なら
- 条件を選べば
まだ新しいことに挑戦できる。
この実感は、
これから先の生活を考えるうえで、
大きな支えになりました。
手放したもの①|「もう年だから」という思い込み
行く前は、
何かにつけて年齢を理由にしていました。
- 若い人の迷惑になる
- 体力的に無理
- 今さら新しい環境はしんどい
もちろん、
無理は禁物です。
でも、
“何もかも無理”ではなかった。
この思い込みを一つ手放せただけでも、
大きな収穫だったと思います。
手放したもの②|「失敗してはいけない」という構え
この年齢になると、
失敗が怖くなります。
でも今回、
小さな失敗をして分かりました。
- 取り返しはつく
- 修正はできる
- やめる選択もある
「完璧に準備してから動く」
ではなく、
「動きながら調整する」
という考え方を、久しぶりに思い出しました。
これは「移住」でも「就職」でもなかった
よく聞かれます。
「また行きたいですか?」
「次は長期ですか?」
正直なところ、
まだ分かりません。
でも一つ、はっきりしているのは、
- 移住ほど重くない
- 就職ほど縛られない
“期間限定で、暮らすように過ごす”
という選択肢を知れたこと。
これは、
定年後の生き方を考えるうえで、
大きな視野の広がりでした。
佐藤さん夫妻の体験は、
「リゾートバイトで人生が変わった」
という話ではありません。
むしろ、
- 少し視界が広がった
- 選択肢が増えた
- 不安が言葉にできるようになった
という変化でした。
定年後の過ごし方に
明確な正解はありませんが、
「試せる選択肢」を知っているかどうかで、
安心感は大きく変わります。
リゾートバイト全体の考え方や、
夫婦・シニア向けの整理については、
以下の記事で全体像をまとめています。
最終章|正直に言います。向いている人/向いていない人
ここまで読んでいただいて、
「ちょっとやってみたいかも」
と思った方もいれば、
「やっぱり自分には難しそうだな」
と感じた方もいると思います。
どちらも、間違いではありません。
リゾートバイトは、
誰にでも向いているわけではないからです。
1ヶ月を終えた今、
私たち夫婦なりに
**「向いている人」「向いていない人」**を
正直に整理してみます。
こんな人には、向いていると思います
①「完璧な条件」を求めすぎない人
正直に言うと、
すべてが理想通り、という環境はありませんでした。
- 部屋は質素
- 仕事は地味
- 思ったほど稼げない
それでも、
「まあ、こんなものか」と
受け止められる人なら、続けやすいと思います。
② 体力に合わせて“引く判断”ができる人
頑張りすぎない。
無理を感じたら、口に出す。
これができる人は、
シニアのリゾートバイトに向いています。
逆に、
「頼まれたら断れない」
「若い人と同じようにやらなきゃ」
と思ってしまう人は、
最初に少し苦しくなるかもしれません。
③ 「観光」より「暮らし」を楽しめる人
毎日観光するわけではありません。
- 近所を散歩する
- 地元の食堂に入る
- 何もせず休む
こうした時間を
「もったいない」と感じない人。
むしろ、
こういう時間が好きな人には、
ちょうどいい働き方だと思います。
④ 夫婦で“同じ経験”をしたい人
私たちにとっては、
これが一番大きかったかもしれません。
- 同じ場所で
- 同じ期間
- 同じ出来事を共有する
旅行とも、普段の生活とも違う、
共通の思い出が増えました。
正直、こんな人には向いていないかもしれません
① 「思ったより稼げない」と感じやすい人
収入をメインの目的にすると、
少し物足りなく感じる可能性があります。
- 手取りは控えめ
- 控除がある
- 生活費は抑えられるが、爆発的には増えない
「お金がすべて」という人には、
別の選択肢の方が合うかもしれません。
② 環境の変化が強いストレスになる人
知らない土地。
知らない人。
いつもと違う生活リズム。
これが大きな負担になる人には、
無理におすすめしません。
「合わなかったらやめればいい」
とはいえ、
行く前に自分の性格を
冷静に考えることは大切だと思います。
③ 「失敗したくない」気持ちが強すぎる人
リゾートバイトは、
多少のズレや想定外が起きます。
- 思った仕事内容と違う
- 生活が合わない
- 期待しすぎていた
こうしたことを
“経験”として受け止められるかどうか。
失敗をゼロにしたい人には、
少ししんどいかもしれません。
私たち夫婦が、今思っていること
今すぐまた行くかと言われたら、
まだ分かりません。
でも、
「もう一度同じ選択をするか?」
と聞かれたら、
答えはYESです。
なぜなら、
この1ヶ月は、
- 何かを失った期間ではなく
- 何かを確かめた期間
だったからです。
定年後の人生は、
長いようで、意外と短い。
だからこそ、
「やらなかった後悔」より
「やってみた結果」を持っておきたい
そう思えるようになりました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
佐藤さん夫妻の体験は、
「成功談」でも
「おすすめレビュー」でもありません。
“検討中のシニア夫婦が、判断するための材料”
として紹介しました。
もしあなたが、
- 少しでも興味がある
- でも不安が残っている
- まだ決めきれない
という状態なら、
いきなり申し込む必要はありません。
まずは、
- 全体像を整理する
- 条件を知る
- 話を聞いてみる
その段階で十分です。


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